時効の法的構成
時効によって真の法律関係より現在の事実状態の方が正当な法律関係として取り扱われるのは、法律関係そのものが動いてしまうからか、訴訟の世界の擬制(フィクション)なのかが、ここでの問題である。
- 実体法説(停止条件説)
- 時効は実体法上の権利の得喪原因、つまり法律関係そのものを動かす効果を持つと考える立場。
- 存在理由の1.、2.と親和的。
- 援用した債権は、実体法上消滅しているので、反対債権を有している場合には、援用前に相殺適状になった場合のみ相殺することができる。
- 裁判上消滅時効を援用した債務者が弁済した場合、は、非債弁済となる。
- 訴訟法説(法定証拠説)
- 時効は訴訟法上の法定証拠、つまり永続した事実状態を、実体的な法律関係がどうあれ、法律上正当なものと認定すべき義務を裁判所に負わせるような証拠と考える。
- 実体的な法律関係≠裁判所の認定であれば、裁判所が認定した法律関係は訴訟の世界の擬制となるが、当事者や裁判所はこの認定に従わなければならない(既判力)。
- 存在理由の3.と親和的。
- 援用した債権は、実体法上消滅していないので、反対債権を有している場合には、援用後に相殺適状になった場合でも相殺することができる。
- 援用した債務者が弁済した場合、は、自然債務の弁済となる。
両説の対立は、従来、消滅時効の中断や援用の法的性質、裁判外の援用を認めるかといった問題と関連づけて論じられ、実体法説が判例・通説とされてきた。しかしその後、実体法説だからこの問題はこうなるといった演繹的な議論は少なくなりつつある。