時効の存在理由

時効により、債務者は本来履行すべき債務を免れ、無権利者が本来根拠のない権利を得る面がある一方で、真の権利者が行使できるはずの権利を失うことになる。このため、日本国憲法第29条が保障する財産権を不当に奪うものではないか、という見地から、時効制度の合憲性について問題となりうる。

時効制度の存在理由の問題には、時効は誰を保護する制度かという「目的」とその正当化する「根拠」という2つの視点が含まれる。時効の存在理由として一般に以下の3つが挙げられる。

  1. 永続した事実状態の尊重
    一定の期間継続した事実状態が存在する場合、それを前提にさまざまな法律関係が形成されるため、そのような法律関係について一定の法律上の保護を与えようとするもの
    取引の安全の保護
  2. 権利の上に眠る者を保護しない
    たとえ正当な権利者であったとしても、一定の期間、その権利を行使・維持するために必要な措置を採らなかった者を保護する必要はないというもの
  3. 立証の困難の救済
    本来は正当な権利者であったとしても、長期間が経過した後にはそれを立証するのが困難になることがあるから、過去に遡っての議論に一定の限界を設けるというもの
    真の権利者保護を目的とする時効制度の根拠

これらの理由は、どの一つをとっても、それだけであらゆる時効の存在理由を説明できるものではないとして、時効制度の存在理由(目的・根拠)を多元的に考えるのが多数説である。これらの理由が、種類ごとにその軽重を変えながら複合して、各種の時効の存在を支えている。